要注意!筋肉増強剤が引き起こす7つの副作用と防止法

筋肉増強剤

筋肉増強剤は、圧倒的な筋肉増強の効果がある反面で、強い副作用があることでも知られています。

たとえば、「筋肉増強剤を一度でも使うと、後遺症に一生悩まされることになる」とまで言う人もいるくらいです。

しかし、本当にそうなのでしょうか?というのも、筋肉増強剤のほとんどは「医薬品」として開発されたものですし、現在も医薬品として使われているものばかりです。そんな薬が認可されるでしょうか?

筋肉増強剤の副作用は、無知なメディアやトレーニーによって、少し誇張されすぎているきらいがあります。

そこで、この記事では、科学的な研究を多数引用しながら「実際にどんな副作用が起こるのか?」を論じていきます。

1.睾丸の機能低下(男性ホルモンの生成量の減少)

睾丸の機能低下(男性ホルモン生成量の減少)は、筋肉増強剤を使えば、ほぼ確実に起こる副作用です。

筋肉増強剤のほとんどは、「男性ホルモンの同位体(男性ホルモンと似た働きをする化学物質)」です。だから、筋肉増強剤を投与すると、体内の男性ホルモンの濃度が高まります。

すると、身体は「もう十分、男性ホルモンがあるから、これ以上、新しい男性ホルモンをつくらなくていいよ」と睾丸に指令を出します。結果、睾丸の機能が一時的に低下し、生成する男性ホルモンの量が低下してしまうのです。

筋肉増強剤を入れると、男性ホルモンの分泌が減少する

筋肉増強剤を入れると、男性ホルモンの分泌が減少することがわかるのが、以下のグラフです。

これは「ナンドロン」という筋肉増強剤を投与した際の、ナンドロンの体内濃度と、身体が生成する男性ホルモンの分泌量を調べたグラフです。最初がナンドロンの濃度、次が睾丸が生成する男性ホルモン(テストステロン)の量です。(出展1

見事に反比例の形になっているのがわかると思います。ステロイドの身体での濃度があがると、男性ホルモンの分泌が減り、ステロイドが体内から抜けるにつれ、男性ホルモンのレベルが回復していますよね。

このように、筋肉増強剤を入れると、その反動で、睾丸の機能が低下し、男性ホルモンの分泌量が減少してしまします。多くの研究により、ステロイドを使うと、男性ホルモンの分泌が、通常時の40-60%まで減少することが示されています。

筋肉増強剤を抜けば回復する

一生下がったままなの?と不安になるかもしれません。が、上のグラフを見てください。筋肉増強剤の濃度が薄れるにつれ、男性ホルモンの分泌量は、元のレベルまで回復しています。これは睾丸の機能が回復したことを示します。

このように、筋肉増強剤の服用をやめれば回復するものなので、それほど深刻な副作用ではありません。

また、8年間以上筋肉増強剤を大量に使用し、現在は1年間服用をやめている16人のボディビルダーの健康状況を調べた研究によれば、彼らの睾丸の機能は、健康な男性と変わらないレベルでした。出展2

8年間以上使用しても、この程度なので、あまり深刻に考える必要はないでしょう。ただし、一時的にではあれ、睾丸の機能は低下し、男性ホルモンの生成能力が減少します。

この機能低下を早急に回復させるためには、クロミッドという薬剤を使用する必要があります。

2.女性化乳房

男性ホルモンの一部は「アロマターゼ」という酵素によって、女性ホルモンに還元されます。

筋肉増強剤を投与すると、体内の男性ホルモンの量が数十倍に増えます。この大量の男性ホルモンの一部が「アロマターゼ」によって女性ホルモンに変わり、女性ホルモンまで通常時の数倍に増えてしまうのです

大量の女性ホルモンは、以下のような副作用を引き起こします。

女性化乳房

大量の女性ホルモンが乳房にあるレセプターと結びつくと、女性化乳房(ビッチティッツ)とよばれる副作用を引き起こします。男性なのに、女性のように、乳房がふっくらと膨らんでしまうのです。

軽いものであれば、服用をやめればおさまります。が、ひどくなると、整形手術以外では治せなくなってしまいます。

実はそれほど頻繁に起こる副作用ではない

女性化乳房は、写真のイメージが強烈すぎるため「筋肉増強剤の副作用」として有名です。が、実は、あまり頻繁に起こる副作用ではありません。

たとえば、健康な男性61人に筋肉増強剤を20週間投与した研究(出展3)によれば、この副作用を発症した人は一人もいません。(上述した「男性ホルモンの分泌量の低下は起こっています)

筋肉増強剤を使うと確実に起こる副作用ではないので、怯えすぎる必要はありません。

ただし、起こった場合のリスクは大きいです。このため、「ノルバデックス」という、女性ホルモンの働きを妨害する薬剤を用意するのが一般的です。

3.肝臓へ負担をかける

経口で摂取する筋肉増強剤の一部は、肝臓に負担をかけます。/p>

通常、ホルモン様物質を口から摂取しても、肝臓がすぐに分解してしまい、身体でのホルモン濃度を高めることはできません。

これを防ぐため、経口の筋肉増強剤のほとんどは、「17αアルキレート加工」という、肝臓になかなか分解されず、長く留まるような化学的な加工がなされています。

肝臓になかなか分解されない」ということは、それだけ肝臓に負担をかけるということになります。このような理由から、経口で摂取する筋肉増強剤には、肝臓へ負担をかけます。

マウスに8週間、筋肉増強剤を大量に投与した研究

ただ、「肝臓へ負担をかける=怖い」ではありません。お酒や風邪薬などの市販薬も肝臓へ負担をかけるからです。問題は「どれだけ肝臓に負担をかけるのか?」ということですよね。

では、どれだけ負担をかけるのか?

マウスに大量のダイアナボル、ウィンストロールなどの経口の筋肉増強剤を8週間に渡り摂取させ、肝臓への影響を調べた研究があります。(出展4

マウスは、人間で言えば、ダイアナボル200mgにあたる量を投与されました。これはボディビル目的で使用する量の約10倍に相当します。

この大量の筋肉増強剤を投与されたマウスはどうなったのか?8週間後の肝臓の数値(ALT・AST)を調べると、投与していないマウスとほとんど変わらず、どのマウスも健康な正常値の範囲内に収まる数値を示したのです。つまり、ダイアナボルはほとんど肝臓に負担をかけていませんでした。

この研究からわかるように、「筋肉増強剤は肝臓に負担をかけるが、かなりの量を摂取しても、大きく悪化させるわけではない」のです。

3ヶ月休めば、元に戻る

とはいっても、肝臓に負担をかけるのは事実ですし、人間とマウスは違います。では、人間の場合はどうか?

筋肉増強剤(経口)を常用していたボディビルダーに3ヶ月間服用を止めてもらい、3ヶ月後に肝臓の健康状況(ALT/AST)を調べ、健康的なボディビルダー(筋肉増強剤を使った経験がない)と比べた研究があります。(出展5

結果はどうだったか?3ヶ月後には、筋肉増強剤を使用していたボディビルダーと、健康的なボディビルダーの肝臓の数値は変わらなかったのです。

つまり、筋肉増強剤を使っていたボディビルダーの肝臓の数値も、3ヶ月の間に完全に回復したことがわかります。

肝臓は人体で最も強い自己再生能力を持っています。手術で70%を削除しても、4ヶ月後には元の大きさに戻るほどです。だから、仮にダメージがあっても、服用をやめれば、肝臓の自己再生能力により、完全に健康なレベルまで回復するのです。

とはいっても、肝臓にダメージがあるのは事実です。肝臓に負担をかけないためには、肝臓の自己再生能力を高める「シリマリン」というサプリメントがオススメです。

4.ハゲ、ニキビ、前立腺肥線の肥大

筋肉増強剤を使うと、ニキビやハゲ、前立腺肥大を引き起こしてしまうリスクがあります。

筋肉増強剤を使うと、DHT(ジヒドロテストステロン)が増える

筋肉増強剤を使うと、男性ホルモンが通常時の数倍に増えます。この男性ホルモン(テストステロン)の一部は、5αリダクターゼという酵素によって、DHT(ジヒドロテストステロン)というホルモンに還元されます。/p>

筋肉増強剤を服用している間は、テストステロン(男性ホルモン)だけでなく、DHT(ジヒドロテストステロン)まで増加してしまうのですね。

DHTがニキビ、ハゲ、前立腺肥大を引き起こす

このDHTは、ニキビやハゲ、前立腺肥大を引き起こすホルモンとして知られています。

ただ、このDHT作用は、現在、症状が出ていない人にはあまり問題がありません。実際、健康な男性61人を対象に20週間筋肉増強剤を使った研究でも、これらの症状が発生した人はいませんでした。あまり深刻なレベルで発生する副作用ではありません。

ただ、前立腺が既に肥大し始めている人や、既に男性型脱毛症の症状が進んでいる方は注意しなければなりません。

この副作用を防ぐためには、男性ホルモン(テストステロン)をDHTに還元する5αリダクターゼの働きを阻害する薬「プロペシア」を飲む必要があります。

5.ロイドレイジ(凶暴になる)

筋肉増強剤の副作用として有名なのが「ロイドレイジ(凶暴な性格になる)」です。

筋肉増強剤を投与すると、男性ホルモンが増えます。男性ホルモンは攻撃性にもかかわるホルモンなので、これが増加することで、攻撃的になる、という理屈です。

ただ、この「ロイドレイジ」に関しては、研究によって、「かなり疑わしい」ことがわかっています。

健康な男性109人に筋肉増強剤を8週間投与した研究(出展6)では、性格検査で「アグレッシブになった」と認められたのは5%に過ぎませんでした。これは、偽物の薬(プラセボ)でも起こりうるレベルで、「科学的に意味のある数値」ではありません。

「筋肉増強剤を使うと、筋肉が増えるが、バーサーカーのような性格になる」とイメージはわかりやすいですが、実際には、ほとんど起こらない副作用です。

6.コレステロール値の悪化

筋肉増強剤を使うと、コレステロール値が悪化します。具体的には、悪玉コレステロール(LDLコレステロール)の値が増加し、善玉コレステロール(HDLコレステロール)の値が低下してしまうのです。

これは、ほとんどの筋肉増強剤で確認されている副作用です。

筋肉細胞をつくるには、コレステロールを使って、筋肉の細胞膜を生成しなければなりません。つまり筋肉の細胞膜にコレステロールが使われるので、HDLコレステロール値が減少してしまうのです。

既に、血中脂質プロファイルが悪い人は注意して使わなければなりません。ただ、ステロイドによるコレステロール値の悪化は、使用をやめればすぐに戻るものなので(出展2)あまり神経質になる必要はないでしょう。

7.身長の伸びが止まる(思春期限定)

思春期(20歳未満)の男性が筋肉増強剤を使用すると、身長の伸びを止めてしまう恐れがあります。

通常、男性ホルモンは、思春期が終わる20歳ごろから30歳までをピークに最も多く生成されます。しかし、筋肉増強剤によって、外部から男性ホルモンを投与すると、身体が「男性ホルモンが増えた 思春期が終わった」と判断して、身長の伸びを止めてしまうのです。

身長が伸びるのは、20歳までで、それより後は、骨が伸びることはありません。いくら筋肉があっても、身長が伸びなくては困りますよね。

20歳未満の使用はあらゆる意味で、おすすめしません。

筋肉増強剤の副作用は誇張されすぎている

どうだったでしょうか?科学的な研究をもとに「実際にはどんな副作用が、どのくらいのレベルで起こるのか?」を解説してきました。

「思っていたよりも深刻ではない」と感じたのではないでしょうか?そもそも、筋肉増強剤の多くは、医薬品なので、致命的な副作用を起こすものが認可されるわけがないのですね。

8年間にわたり大量の筋肉増強剤を摂取したボディビルダーの健康状況は?

では、長期間、筋肉増強剤を使用した場合はどうでしょうか?「大量の筋肉増強剤を最低でも平均8年間以上使用していて、現在は1年以上使用を止めている」「大量の筋肉増強剤を平均9年以上使用し、現在も使用を続けているグループ」の健康状況を調べた研究があります。(出展2)

「現在も使用を続けているグループ」は、男性ホルモンの分泌能力の低下や、肝臓の数値の悪化が認められました。しかし、「8年以上使っていたが、今はやめているグループ」は、男性ホルモンの健康状況も、肝臓の健康状況でも、同年代の健康的な男性と同じだったのです。

筋肉増強剤は身体に負担をかけますが、それはどの薬も同じこと。8年継続して使用しても、服用をやめれば、健康なレベルにすぐに回復するのです。

筋肉増強剤よりもタバコの方が危険?

もし、「筋肉増強剤が強力な副作用を引き起こす、悪魔の薬」なら、こんなことはありえませんよね。筋肉増強剤の副作用は、マスメディアなどによって誇張されすぎているきらいがあります。

実際、アメリカで薬物や食品による死亡数ランキングを調べた調査によれば、

  • タバコによる死亡(年)…435,000
  • アルコールによる死亡(年)…85,000
  • 筋肉増強剤による死亡(年)…3

となっています。ちなみに「3」という数字だけでいえば「ビタミン剤」よりも少ない数字です。もちろん、筋肉増強剤を服用している人は、タバコを吸っている人より少ないでしょうが、それでもかなり少ない数値といえるでしょう。

上で紹介しているように、筋肉増強剤には副作用があります。しかし、どれもコントロール可能なものですし、長年使っても、健康に大きな影響を与えません。